TVの“昭和の歌謡名曲集”などの特番を観ていて太田裕美の「木綿のハンカチーフ」やチューリップの「サボテンの花」などのイントロが流れてくるだけで条件反射的に涙腺が緩む…筆者はそんな世代。となると“カタログ”というと、いまだに紙のカタログでなければ気が済まない。
最近、何か知りたいことがあればサッと手元のスマホで検索をかけてしまい、デスクの上の広辞苑・第7版を開いて調べる機会が減ってしまったこととも通じる部分があるが、やはり紙のカタログは、真新しい印刷の匂いを感じながらページをめくり、写真や文言を味わいながら眺め、じっくりとその商品への思いを馳せられるところに価値がある。
そんな紙のカタログに関して、筆者はクルマを中心にオーディオ、カメラなどノンジャンルで集めてきた(捨てられずにきたという方が正しいのかも?)のだが、眺めていると、時代ごとに作り方の流行、作法があることにも気づく。
そんな中でも印象的だったのが、1960年代から1970年代にかけて見られたイラスト仕立てのカタログだ。写真はその一例で、1971年のクライスラー・プリマスのカタログだが、開くとクルマの外観が絵で描かれていて、その何ともおおらかな風合いについ見入ってしまう。
同じ年代の国産車にもイラストのカタログは少なくなく、写真でご紹介している2代目トヨタ・クラウン(1962〜1967年)、3代目510型・日産ブルーバード(1967〜1973年)、マツダR360クーペ(1960〜1969年)などがそうだった。
イラスト(絵)といっても作風がさまざまだったことも興味深く、クラウンはシンプルだがいかにも堂々とクルマが描かれているし、510ブルーバードはフロントグリルの細いメッキのバーの1本1本まで精緻に、リアルに描かれている。
またマツダR360クーペは、この中では年代ももっとも遡るが、クルマとともに人物も優しいタッチであり、そこにはファミリーカーのある夢のシーンが描かれていた。クルマ以外にもイラストのカタログは多くみられた。
写真は一例で、服飾メーカーのブルックス・ブラザーズ、これは確か70〜80年代のカタログだが、リアルな写真とはまたひと味違い、あるいは写真のカタログ以上に、「一体、実物はどんなだろう?」とコチラの想像力をかき立ててくれるところが魅力だ。
※カー・グッズプレスvol.102の記事を元に構成しています
<文/島﨑 七生人(モータージャーナリスト)>