ドライバー誌の活版ページで見た東京・西麻布の「青山ピットイン」、少し前に惜しくもお店をたたんでしまった調布の「カンナム」などは足しげく通った僕の〝聖地〟の広告だった。
で、どうしてそこが〝聖地〟だったかというと、普通ではあまり手に入らない海外のパーツを取り扱っていたから。青山ピットインで、ジャガーが装着していたメッキの砲弾型のミラーが手に入るというので勇んで駆けつけ、自分のクルマ(その時はいすゞ117クーペだった)に取り付けてご満悦だったことなどはいい思い出だ。
「クルマとオーナーは国産だけど付けているパーツはほとんど外車だね…」とショップに出かけるのに付き合わせた友人たちからはそう言われ、苦笑されたもの。
けれど、カー・グラフィックやモーターファンの広告ページに仕込まれた僕の理想は高く、もちろん日本のブランド、パーツにも優れたものがいくらでもあったから申し訳なかったが、ひたすら輸入モノに目を向けていた。
117クーペに自分で選んで組み合わせたのは、アルミホイールはカンパニョーロ・エレクトロン101(写真のホイール)と最後まで迷った末に選んだクロモドラAタイプ(フェラーリなどでおなじみの星形デザイン)、タイヤはミシュランXVSやピレリCN36、ダンパーはコニ、ヘッドランプはマーシャル、ステアリングはナルディ(ウッドと黒スポークのレザーの2本)。
まだドアミラーが認可前だったが、フェンダーミラーの穴埋めをしてもらい、ビタローニやE21型初代BMW3シリーズと同じドアミラーなども付けた。レカロシートは、クルマの雰囲気を壊しすぎるので手を出さなかった。
今はたいていのものが手に入る反面、エアバッグ付きのステアリングは交換できないなど寂しい気もする。
昔はクルマ好きであればあるほど〝吊るし〟では乗らず、自分流に(今でいうカスタマイズ)仕立てて楽しんだものだ。もちろん、見た目だけでなく、クルマ自身の性能アップも大事な目的のひとつだった。
ヘッドランプを暗いシールドビームからマーシャルのハロゲンに自分で交換、夜になって山道に走りに行き「何て明るいんだろう」と感動した時の記憶は今でも鮮明だ。
<文/島﨑七生人(モータージャーナリスト)イラスト/サキエ>
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